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Monday, July 5, 2021

「ジョブ型」雇用に恐れる必要はあるのか 「賃金」が上がるかもしれない理由 - ITmedia

layaknaik.blogspot.com

 コロナ危機をきっかけに日本型雇用の見直しが一気に進もうとしている。日本の雇用は「メンバーシップ型」などと言われているが、実際にはメンバーシップ型などという型はなく、日本だけが特殊な雇用形態だったに過ぎない。結局のところ、日本は諸外国と同様、業務に対して賃金を支払うという、ごく普通の雇用形態に戻るだけであり、まじめに働いている労働者にとってそれは悪いことではない。

気付いたら世の中は「管理職」だらけ

 日本企業ではこれまで、終身雇用が保障されているのがタテマエとしてあった。現実に終身雇用が維持されているのは大企業とその関連会社だけだが、それでも多くの労働者が失業の心配をせず働くことができた。だが社員の面倒を一生見る仕組みは、経済が半永久的に成長することが大前提の制度であり、一般論として持続不可能である。

会社の中は「管理職だらけ」(出典:ゲッティイメージズ)

 企業は10〜20年後ごとに事業内容を見直す必要があるが、新規事業に取り組む際にはどうしても新しい人材が必要となる。だが終身雇用の場合、新規採用を行っても解雇することはできないので、社員の総数は増える一方となる。

 日本の場合、終身雇用かつ年功序列なので、一定の年齢に達した人はほぼ自動的に管理職に昇進させている。このため管理職ばかりが増える状況となっており、1980年代に全体の21%程度だった管理職比率は、2010年代には26%まで上昇した。読者の皆さんが勤務する組織でも、「管理職」と呼ばれながら実際には管理職の仕事をしていない、いわゆる「名ばかり管理職」がたくさんいるのではないだろうか。

 近年、企業が役職定年や早期退職プログラムを強化しているのは、組織の肥大化が限界に達しており、現状を維持することがもはや不可能となってきたからである。

 大手電機メーカーのパナソニックが、中高年社員を対象とした早期退職に踏み切るニュースが話題となっている。「事業は人なり」をモットーに掲げ、雇用維持を何よりも重視してきたパナソニックですらこうした状況であり、コロナ危機が一段落すれば、多くの企業が続々と人員整理に踏み切るだろう。

パナソニック、中高年をターゲットにリストラ(出典:ゲッティイメージズ)

 ビジネスパーソンの中には不安を抱えている人も多いかもしれないが、まったくといってよいほどスキルがない人や、管理職とは名ばかりで若手の邪魔をしてばかりいるような人を除けば、新しい雇用形態はそれほどひどいものではない。それは諸外国のケースを見れば明らかである。

日本の雇用だけが特殊な形態に

 日本の雇用制度は「メンバーシップ型」であり、今後は「ジョブ型」にシフトするなどと説明されているが、実はメンバーシップ型などという型は存在しない。日本以外の主要国は、すべて業務に対して賃金を支払う制度であり、構成員であることに給料を払っているのは日本だけである。

人事担当者に聞く、ジョブ型雇用をしっていますか?(出典:リクルートキャリア)

 かつては、こうした日本の特殊な雇用環境について「日本型雇用」などと説明していたが、最近では「メンバーシップ型」などと、あたかもいくつかの型があるかように説明する専門家が増えてきた。おそらくだが日本の雇用は特殊だと指摘すると、自称「愛国者」から執拗(しつよう)な誹謗(ひぼう)中傷を受けるので、こうした人たちに忖度(そんたく)し、曖昧な説明をするようになったものと推察される。

 結局のところ、業務に対して賃金を支払うのが当たり前であり、日本もかつては諸外国と同様、業務に対して賃金が支払われていた。そして業務に対して賃金を支払う制度のほうが労働者にとっては公平であり、満足度も高い。

ジョブ型雇用を導入している企業は12.3%(出典:リクルートキャリア)

 所属に対して賃金を支払ってしまうと、定年退職するまで、組織に対する絶対的な忠誠が求められる。転職市場も整備されないので、ひとたび失業すれば行き場を失う。結果として、会社からの無理難題を唯々諾々と受け入れたり、無制限の長時間残業が横行したりする。業務ではなく組織に対する忠誠に賃金が払われていることを考えれば、日本企業が総じてブラックな体制になるのも当然といってよいだろう。

 賃金が業務に対して支払われると、労働者と企業の力関係が変わる。業務が終わればそれでおしまいで、それ以上の要求を行うことはできないし、何より労働者側にそれを受け入れるメリットがない。無理難題を受け入れる労働者が少なければ、結果としてブラックな職場は減っていく。

ジョブ型のほうが結局は賃金は上昇する

 終身雇用が保証されないと失業するリスクは高まるが、社会全体として転職が多いのなら、人材を放出する企業がある一方で、新規に雇用する企業も出てくる。幸いなことに、日本は今後も人口減少と高齢化が続くので、人手不足はより深刻化する。求人に対して労働者が少ない状況なので、相対的には労働者に有利な状況が続くだろう。

所得の分布状況(出典:厚生労働省)

 唯一の心配は自身のスキルが陳腐化することであり、いわゆるジョブ型の社会になった場合には、自身のキャリアやスキルについて漫然と構えることはできなくなる。だが、いくらITが発達するといっても、営業や経理、マーケティングという根本的なスキルや知識が不要になるわけではない。

 IT化が進めば、既存のスキルに加えてITについての知識も身につける必要があるが、こうした最低限のキャッチアップさえしていれば、仕事は必ず見つかり、タダ働きなどする必要がない社会のほうが、多くのビジネスパーソンにとって幸せではないだろうか。

最低限のITスキルがあれば……(画像はイメージ)

 しかもジョブ型の雇用が進めば、実は賃金もアップする可能性が高い。業務に対して賃金を支払う場合、企業は過剰に社員を雇用することはしなくなる。賃金の原資が同額である場合、社員数は減るので1人当たりの賃金は上昇する可能性が高い。

 余剰な社員が市場に出てくれば、別な企業がその社員を雇って新しい事業をスタートするので、全体の賃金も増えていく。努力を一切せず、何もしないで机に座り、給料を受け取ることだけが目的の人には嫌な社会かもしれないが、それ以外の健全なビジネスパーソンにとって新しい雇用制度はむしろウェルカムなはずだ。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。


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