
決勝のレースで感じた力の差
「8分一ケタという目標をこんなに早く達成できるとは思っていなかったので驚きはありましたし、決勝の直後は入賞できてもちろんうれしかったです。ただそれ以上でもそれ以下でもなく、自分のなかではもう消化した感じです」 東京五輪で日本男子3000mSCの歴史を大きく塗り替えた三浦龍司。予選で樹立した8分09秒92の日本記録と決勝7位の結果という偉業を大会後に振り返ることはないという。しかし東京の大舞台で踏んだ2本のレースはこの19歳の潜在能力と可能性を存分に見せつけるものだった。 予選前、三浦は「“海外仕様”のレースになったら勝負できないと思っていた」と考えていたという。彼のいう“海外仕様”とはスローで入って、ラストで爆発的にペースが上がる展開を指す。そうではなく比較的、イーブンで進む“国内仕様”のレースに持ち込んでこそ予選突破につながるとの思惑から三浦は序盤から前に出て、ハイペースでレースを動かした。すると海外勢がそれに反応。狙いどおりの展開になった。とはいえ最初の1000mの先頭の通過は2分42秒台。三浦が過去、経験したことのない突っ込み方だった。 「速いですけど、一人で引っ張ったわけではないですし、障害の脚も合っていて、うまく入れたと思います。それにそこからは海外勢が前に出ると思っていたので、ついていけばいいと思っていました。確かに速かったですが、心理的な余裕はありました」 以前から長門俊介監督は「1000mを2分45秒かそれを切るくらいのペースじゃないと三浦は障害で脚が詰まってしまう。海外の有力選手と走るオリンピックはペースが上がるでしょうから彼の力がより発揮できるはず」と話しており、8分10秒を切る力はあると見ていた。とはいえメジャーな国際舞台は初出場。そこで並み居る海外勢相手にレースをコントロールして見せた力は驚異的だ。この序盤で自ら流れを引き込んだことが日本記録の更新、そして予選突破につながったことは間違いない。 決勝でもスタート直後からスローに感じ、1周目の終わりから前に出た。しかし予選のようにほかの選手を巻き込めなかった。そして一気にペースが上がるタイミングで世界の力を痛感する。 「1000mからペースが上がるところで、周りに合わせられず“うわーっ”と思っていました。瞬発的に離されるのではなく、ジワジワと離されたされたところに力の差を感じましたね」 1000mから2000mの走り方は三浦が日頃から課題として感じている部分。決勝ではここでペースが上がった。とはいえ三浦は冷静に自分のポジションを確認しながら、入賞を狙える位置で粘る。そして最後の1周、フィニッシュまで200mを切ってから得意のスパートで順位を上げてみせた。力の差を感じながらも手にした7位の価値は大きい。
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