メンバー全員が現在21歳という大阪の6人組ロックンロール・バンド、THE PERRYがファースト・フル・アルバム『Who's THE PERRY』をリリースした。ツイン・ギターにキーボードを含む編成の分厚くダイナミックなサウンド、なまめかしいヴォーカル、それに親しみやすいキャッチーなメロディで攻めていく、血の滴るようなイキのいいロックンロールが彼らの持ち味。本作は小細工なしのストレートな演奏で押し切った、混じりっけなしの鮮度たっぷりなアルバムだ。こんなにピュアでみずみずしいロックンロールは、今の時代でとても貴重な存在といえるだろう。メンバーの檍正継(ヴォーカル&ハープ)、ゲン(ギター)、ワカイヒロヤ(キーボード)の3人に話を聞いた。
――バンドの始まりから聞きたいんですけど、高校時代に軽音部で結成したそうですね。
檍正継「もともと全員が同じ学年で、軽音部で、途中でメンバーが増えたりはあったんですけど、脱退もなくずっとそのままやっています」
ゲン「もともと顔を知ってて仲も良かったので、自然と今のかたちになった感じです」
――ロックンロールをやっているのはメンバーが全員好きだったから?。
ゲン「みんな好きだったからです。最初に軽音部で活動していた時は、ブルーハーツのコピー・バンドみたいな形でした。高3くらいの時にオリジナルをやろうって話になって、それが自然とブルーハーツみたいな感じのオリジナル曲になって、そこからだんだん自分たちの形はなんだろうって考えていくうちに、今のロックンロールになっていきました」
――具体的にはどういうバンドが好きなんですか。
ゲン「初めて聴いたロックンロールがRCサクセションで、そこからブルーハーツのコピー・バンドをやっていくうちに、洋楽も聴くようになって、ローリング・ストーンズを聴いた時に、“RCサクセションみたいだな”と思って(笑)。逆なんですけど、その衝撃がすごくありました」
ワカイヒロヤ「音楽で最初にかっこいいと思ったのは、THE YELLOW MONKEYです。それとチューリップ。どちらも父親が大好きで、その影響で好きになって、今でも自分が音楽やる上で、いちばん目標になるのはイエモンとチューリップです」
檍「僕は小さい時から親が車とかでブルーハーツを聴いてたのが大きかったですね」
――結成した時、バンドとしてのヴィジョンみたいなものはありましたか。
ゲン「なかったです。最初はバンド名も活動するためにつけてるだけで、ただの名前ぐらいの感じで。歌って、ギター弾いて、ドラム合わせて、っていうのが楽しくて、今もその延長線上って感じです」
――みなさんの世代だと音楽的な選択肢はたくさんあるわけじゃないですか。その中でロックンロールっていう、いわばオールドスタイルをやっているのはどうしてだと思いますか。
檍「かっこいいからだと思います」
元「最初にかっこいいと思ったのがこれやったからっていうだけです」
ワカイ「やっぱりいちばん好きで、いちばん楽しいからです」
――6人編成で、ツイン・ギターで鍵盤入りっていうのは、ロックンロール・バンドにしては大所帯だと思うんですけど、どうしてこういう編成になったんでしょうか。
檍「最初の頃5人でライヴしていた時に、それを見たワカイが、“鍵盤あったらいいよね”って言って」
ワカイ「僕が初めてお客さんとして見て、“これ、ピアノの音あったほうが絶対かっこいいよな”って思った曲があって、その頃から正継とゲンと仲良かったんで、話して。“それじゃ一回やってみてや”って。それまでピアノを触ったことなかったんですけど、ライヴでその日限定のメンバー、みたいな感じでやったのが始まりです」
檍「でもそこから、できることが増えていった感じやと思います」
――ツイン・ギターも含めて、この編成だからこその音圧やダイナミズムがあって、そこが強みだと思います。
ゲン「あまり考えていなかったんですけど、言われてみれば強みだと思います。(ギター)2本でしかできないことも増えてきて、すごく意味のある2本ですよね」
――ソングライティングについては、ヴォーカルの檍さんだけではなく、ゲンさん、道林陽斗さん(ベース)、脳麺さん(ドラム)も書いていて、曲を書けるメンバーが多いですよね。
ゲン「やっていくうちに、いろんなやつが曲作れたらいいよねとなって。それでみんな作ってみたら、“案外いいの作ってくるやん”って(笑)。じゃあ全然、ヴォーカルだけじゃなくていろんな人が作ればもっといいよねとなりました。今後はワカイやもうひとりのギターのズーマーが曲作ってくるのもアリかなと思ってます」
――檍さんは、全部自分で書こうとは思わないんですか。
檍「ほかの人が書いてくる曲があまりにも違う色だったらそうしたほうがいいと思うんですけど。でもたとえば、曲によって違うことを言っていても、僕らの芯はみんな同じだと思っています」」
――ファースト・アルバム『Who's THE PERRY』は、こういうサウンドにしたい、というコンセプト的なものはありましたか。
ゲン「やっぱりバンドのファースト・アルバムというのはどれも強烈なものが多いので、それに負けまいと考えた部分はあります」
――音の迫力とかダイナミズムとか?
ゲン「そういうところですね。あと録り方もそう」
――音質がすごくいいですよね。ファーストEPの『Smash』(2020年)あたりに比べても格段に良くなっていて、ガツンとくる音圧があります。
ゲン「音源だけど、ライヴを聴いているような、だけどしっかり音源っていう、迫力だったり綺麗さが欲しかったんです」
――頭脳警察の「コミック雑誌なんか要らない」をカヴァーしていますね。
ゲン「スタジオで自分たちの曲をやっているのに飽きてきて(笑)、なんかカヴァーやろうかってことになって。僕らが頭脳警察をやったらたぶんかっこええなって思って、やってみたんです」
――全体として、意識してオリジナリティを出そうというよりも、とにかく自分たちの好きなロックンロールをやっているのが楽しい、バンドをやっているのが楽しい、そういう喜びみたいなものがストレートに伝わってくるアルバムだと思うんです。
檍「そうですね。自分たちの色みたいなところはあまり客観視できていないんですけど、やりたいことだけやった、というのが答えだと思います」
ゲン「そのとおりです。やりたいことをやったというだけです」
――ファーストらしいファーストというか、ザ・フーとかブルーハーツのファーストに通じるような、ピュアでまっさらなアルバムだと思います。フーでもブルハでもその後音楽性が広がっていくわけじゃないですか。THE PERRYはどうなると思います?
檍「曲にしろやりたいことにしろ、今がいちばんピュアで、今がいちばん上澄みの部分というか最初に出てきた部分なので、そういう意味ではファーストっぽいとは思う。これから先どうなるかは正直わからないですね。その時その時のやりたいことをやりたいと思っています」
――バンドとして野心みたいなものはありますか。
檍「もう一度、流行りが回るというか、ロックンロールの時代に戻すきっかけみたいなものになりたいです。僕らだけじゃなくて、同世代のロックンロール・バンドも含めて、僕たちの親世代くらいの感じがまた来たらいいなというのはなんとなく考えているんですけど」
――ロックンロールの復権というか、先達がやってきたことを受け継いでいきたい、ということですか。
檍「そうですね。たぶん僕らが世代的にギリギリ最後だと思うんですよ。じかにリアルタイムで見ることのできた最後だと思う」
――最後にもうひとつ。こういうバンドでありたい、というものはありますか。
檍「もちろん売れるにこしたことはないんですけど、売れるためにこびたりはしたくない。今やっているようなことを続けていって、そこでまたロックンロールの時代に戻ったらいいなと思います」
ゲン「やっぱり自分たちがいちばんかっこいいと思える音楽をやりたい。今もできていますし、もっとできると思っているんで。それが目標です」
ワカイ「僕もそうですね。自分のかっこいいと思っているものにちょっとでもなれるようにがんばります」
取材・文/小山 守
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