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Tuesday, February 15, 2022

雪煙上がるスギ伐採 機械化進みまるで建設現場 - 朝日新聞デジタル

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【動画】雪かぶる山に響くエンジン音 機械化が進むスギの伐採現場=松村北斗撮影

 植えられたスギ林の面積が日本一を誇る秋田の林業。林業に携わる人が減るなか、スギの伐採や丸太の生産は、どのように行われているのか。素材生産会社エフ・ジー(佐藤直俊社長、本店秋田市)の作業に同行した。

 1月18日朝、秋田県五城目町にあるエフ・ジーの支店から、社員の福田雄貴さん(30)が運転する四輪駆動車に乗せてもらった。

 行き先は、内川地区のスギ林。山林を所有する井川町の企業から約10ヘクタールの斜面に生えているスギを購入。昨年10月から社員と外部の協力業者あわせて6人が山に入り、伐採から丸太の出荷まで行っている。

 秋田県内の植林されたスギの面積は国有林、民有林あわせて36万7千ヘクタールと全国一。太平洋戦争終戦後、都市の住宅復興のためにスギが伐採され、その跡地に1950年代から盛んに植林が行われた。さらに69年から「年間1万ヘクタール造林運動」が始まり、70年代にかけて急な斜面や山の奥にもスギが植えられていった。そうしたスギがいま、樹齢50~60年の切るのに適した時期を迎えている。

 雪が降るなか林道へ。道の除雪も自分たちで行う。林道を4キロ弱進むと、終点の道ばたに丸太が積まれていた。「土場(どば)」と呼ばれる一時保管場所だ。

 斜面につくられた作業道を、丸太を積んだ林内作業車と、重機が下りてきた。丸太を重機でつかみ、次々と土場に積んでいく。機械化され、さながら建設現場だ。ここに保管される丸太は、運送会社の大型トラックで県内の製材会社に供給されていく。

 福田さんの案内で、作業道を登った。長靴だったので雪で滑る。静まりかえった山に、チェーンソーのエンジン音が聞こえてきた。1人の男性がチェーンソーを扱い、もう1人が切り口にくさびを打ち込む。

 エンジン音が消えた静寂に、周りの作業員に警告する笛の音が鳴り響いた。バキバキという音とともにゆっくりスギが倒れ、着地すると激しく雪が舞った。

 切り倒されたスギは重機で並べられた後、重機に取り付けられたハーベスタと呼ばれる高性能の機械で、幹から枝を落とす作業と、2メートルや3・65メートルなど決められた寸法に幹を切断して、丸太を作る作業が連続して行われる。

 ハーベスタは立っている木を根元から切る機能も備えるが、「ここは斜面がきつく、重機が入れる場所に限りがあるため、チェーンソーを使っている」と福田さんは説明した。

 こうして作られた丸太が、林内作業車に積まれて斜面を下っていく。

 現場を統括する班長の男性(73)は半世紀以上、山の仕事に携わる。「馬を使ったり、山にワイヤを張ったりして丸太を運んだ時代もあった。機械を使うようになって、ずいぶん楽になった」

 丸太は、曲がり具合や傷、幹に腐っている部分があるかどうか、直径などで等級が異なる。現場で丸太を作る社員がまず等級を判断する。その後、土場で長さがそろっているかや直径を再度チェックし、等級を分けてトラックに積む。

 作業を見た後、林道を引き返すと、ところどころ車底をこするほどの起伏があり、四駆が大きく揺れた。ただ、「冬の方がまだまし」と福田さん。雪がある分、道路の傷みが少ないという。夏は丸太を積んだトラックの重みで起伏ができやすいという。途中、運送会社の10トントラックがやってきた。林道の幅は車幅ぎりぎりだ。すれ違える場所で四駆が路肩に寄った。

 「道路の通行許可を取ったり、くぼんだ場所に砂利を入れたり、傷んだ路肩を修復したりするのも我々の仕事の一つです」

 エフ・ジーの従業員は9人。昨秋以降、この現場と隣町の三種町の自社保有林の2カ所で、総出で伐採や成長を促すために細い木を間引く作業に取り組む。製材工場が丸太を買い取る価格が上がった昨年来、山林の所有者から伐採の依頼が相次ぎ、「フル稼働が続いている」と福田さんは話す。

 長期的には低迷が続いてきた丸太の価格が上がった背景には、「ウッドショック」がある。昨春以降、新型コロナの影響により、米国で郊外に住宅を買う人が増えて住宅需要が急増し、そのあおりで住宅用木材不足が世界中に広がった。この「ウッドショック」で国内の丸太価格も上がった。

 たとえば、県内大手の製材会社が、合板を作るための丸太を伐採業者らから買い取る価格は、この10年、1立方メートルあたり1万円前後だった。しかし昨春以降は徐々に上がり、今年1月中旬から1万7千円になっている。

 熊本県出身の福田さんは、林野庁の公務員として秋田県内の森林管理署で働いていたが3年前に入社した。「事務仕事中心ではなく、実際に木を切り、丸太を生産してお金を生む。林業全体への理解を深めたい」という思いからだという。同社には自動車整備や解体業から転職した社員もいる。

 新たな担い手を確保しようと昨年、エフ・ジーは五城目町の中学校で職業体験、県立五城目高校で就職ガイダンスを開いた。高校3年の1人が春に入社予定だ。「林業に関心をもってもらう若者が少しでも増えれば」と福田さんは願う。

 県内で伐採や植林に携わる人は昨年度は1368人で、20年前より3割以上減っている。「切りどき」のスギを伐採し、将来にわたって林業を続けていくために跡地に植林することは欠かせない。人手の確保は林業にとって大きな課題となっている。(松村北斗)

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