「堀江さん、おかえりなさい」――。兵庫県西宮市の新西宮ヨットハーバーで5日に開かれた、ヨットで世界最高齢での単独無寄港の太平洋横断を達成した堀江謙一さん(83)の帰港セレモニー。数百人の市民や関係者が出迎える中、堀江さんがしっかりとした足取りで陸に上がると、大きな歓声や拍手がわき起こった。
堀江さんは桟橋上で、69日間の航海を連れ添った相棒のヨット「サントリーマーメイド3号」を前に、市民に向けてガッツポーズ。記念セレモニーでは「僕は青春まっただ中。まだ若輩です」などと、航海中に見せた険しい表情から一転、笑顔を絶やさずに語った。駆け付けた石井登志郎市長や同ヨットハーバーの大谷俊洋社長らからねぎらいの言葉をかけられた。
続いて、施設1階の会議室で記者会見に臨んだ。主なやり取りは以下の通り。
――陸に久しぶりに上がったお気持ちは。
「何十日ぶりかで、意外に歩きにくい。なじむのにもうしばらくかかりそうです」
――多くの人に歓迎され、取り囲まれていましたね。
「航海は、僕自身の自己満足のためでしたが、多くの方にいい影響を与えられたのなら、喜びです」
――世界最高齢で太平洋横断を達成されたお気持ちは。
「最高齢で太平洋横断というのは、僕にとって一つの夢でありました。夢を夢で終わらせず、挑戦して達成でき、大きな喜びを感じます」
――航海にあたり苦労したことは。
「今回の航海はコロナ禍で準備が大変で、いつ中止になるか分からない薄氷を踏むような思いでした。ですが、一つ一つ解決でき、うまくいきました」
――今後の目標は。
「僕自身の高齢、家族の高齢もありますが、生涯チャレンジャーでいきたいと思います」
――海上で多くの方と日々、交信を続けていましたが、どう感じましたか。
「60年前の航海はラジオしかありませんでしたが、追跡システムなど技術が進歩し、時代が大きく変わりました。今後も色々な通信方法が開発されていき、みなさんともっと仲良く航海できるのではないかと期待しています」
――今回の航海でこれまでの経験は役に立ちましたか。
「経験は役に立ったが、前回の航海から長年の空白があり、忘れていることもあった。何ごとも初心に帰るべきということを学び直しました」
――今回の航海で印象に残ったことは。
「色々な困難があったが、多くの方に全力を挙げて協力してもらい、助けてもらいました。チャレンジに対する理解が深い時代になったように感じた。また、サンフランシスコでは60年前の航海のことを多くの方が覚えていてくれ、僕自身も当時のことがよみがえってきました」
新西宮ヨットハーバーには、偉業を成し遂げた堀江さんの姿を一目見ようと、多くの市民が集まった。親子や高齢者からはチャレンジ精神をたたえる声が相次いだ。
神戸市北区の主婦(69)は毎日、ヨットの位置情報が分かるインターネットの追跡システムで堀江さんの現在位置を見守った。「1時間ごとにタブレットを開いて確認していた。わくわく、ドキドキ、一緒に航海をしているような気分になった。強い精神力で見事にやり切ったと思う。自分も頑張りたいと元気をもらった」と喜んだ。
からの記事と詳細 ( 帰港した堀江さん「生涯チャレンジャーで」…陸に上がった感想は「意外に歩きにくい」 - 読売新聞オンライン )
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