『仕事と自分を変える 「リスト」の魔法』(堀 正岳 著、角川書店)の著者は、いつでも箇条書きのリストをつくっているのだそうです。
仕事はもちろん、家庭の用事も、心のなかを探るときも、つまり人生のすべての瞬間でリストを活用しているというのです。
リストは未来を呼び寄せてくれる道具でもあり、思考のための基本的な道具。
そしてそんな道具は、記憶力や思考力を高め、才能を引き出す力も備えているもの。しかも簡単で基本的なツールだからこそ、誰にでも使うことができるのだとか。
仕事をするときに、ほんの少しの工夫とともに「やることリスト」を作るだけで、これまで捌ききれなかった仕事がラクにこなせるようになります。
頭が混乱していてパニックに陥りそうなときにも、1枚の紙に「ブレインダンプのリスト」を作ることで気持ちを落ち着かせ、ストレスを和らげることができます。
失敗が起こりそうな複雑な仕事をしているときには「チェックリスト」が間違いを未然に防いでくれるでしょう。
読んでいる本や自分の内面を「構造化のリスト」に書き出して忘れないようにできますし、「バケツリスト」を使って将来の夢を具体化することもできます。(「はじめに」より)
つまり、簡単に実践でき、これまでできなかったことを可能にし、いままでできていたことをより高いレベルで可能にする、そんな力がリストにはあるということ。
著者が常にリストを書いているのも、その力を踏み台のようにして自分の至らない部分を補強し、なおかつ自分の能力を限界以上に引き出すためなのだそうです。
そんな、誰にでも実践でき、どんなときにも活用できるリストの地方についてまとめた本書の第3章「仕事をラクにするリストの使い方」のなかから、「やることリスト」についての考え方を抜き出してみましょう。
基本の「やることリスト」のつくり方
やることリストは、チェックボックスのついた箇条書きのリストを書くだけでつくることができます。しかし、チェックボックスの書き方、消し方にもいろいろな特徴があるもの。
多くの人はチェックボックスを四角で表現し、その項目が完了すると箱の外にはみ出すチェックマーク(☑︎)をつけるのではないでしょうか。
しかし、チェックボックスとチェックマークはこの1種類だけではなく、人によっては四角ではなく丸を使う人もいるはず。あるいは、行全体を線で消す人もいるかもしれません。
みなさんが利用する際にも、その日の気分で爽快感が生まれる方法を選びましょう。
つまらないことのように思えるかもしれませんが、こうした小さな気持ちよさがリストを使う楽しさを生み出すのです。(76ページより)
チェックボックスの使い方によって、作業中であることと、完了していることを区別する方法もあるそう。
作業に取りかかったらボックスを半分だけ塗り、完了したら全体を塗りつぶすという方法や、箇条書きの前後に2つのチェックボックスを書き、作業中は左側のボックスを、完了したら右側の箱を塗りつぶすといった方法。
つまりチェックボックスの使い方ひとつとっても、さまざまなアイデアを盛り込み、活用することができるということです。(76ページより)
スマートなタスクの書き方を身につける
さらに重要なのは、実際に書く「やること」の内容。たとえば、やることリストに「仕事をする」と書いてあるだけでは、あまり意味がないわけです。
大切なのは、あとで読んだとき、次に行う行動(アクション)がすぐわかる状態になっていて、どれだけ時間がかかるのかの見通しを立てられること。
そのためには、リストの書き方自体に工夫が必要であるのです。
そして、そうした効果的なやることリストをつくる手助けになるのが、プロジェクトマネージメントの分野で「SMARTなゴール設定」と呼ばれている考え方。
英単語のSMARTの頭文字をとって、次の5つに注意することを目指そうというものです。
*S(Specific:具体的な)書かれたタスクが具体的で、あいまいさがないこと
*M(Measurable:定量的な)作業の量が明確であること
*A(Attainable:実現可能な)書かれたタスクに無理がなく、実現可能であること
*R(Relevant:意義がある)いまやるべき、意味のあるタスクであること
*T(Time-bound:時間が区切られている)いつまでも時間がかかるのではなく、切りよく終えることができること
(79ページより)
たとえば、やることリストに「たまっている仕事をすること」と書く場合、それはあまりよい書き方とは言えないはず。
それがなにを指しているのか、自分にはわかるかもしれないけれど、曖昧で「どんな行動をとるのか」が書かれていないからです。
そればかりか、「どこまでやれば終わりとみなせるのか」「どの程度の時間がかかるのか」といった詳細もないので、いつまでたってもこのリストを完了させることができないことになってしまいます。
そのため忘れるべきでないのは、「最も重要なメール5通について返事を書く(1通あたり5分程度、30分以内で)」といったように、具体的に書くこと。
単に論理的でわかりやすいだけではなく、リストを見たときの心理的な抵抗が少なく、実行しやすいというメリットもあるそうです。
なおタスクを書くとき、いつもSMARTのすべてを満たしている必要はないそうです。
あくまでも、自分にとってわかりやすく、心を楽にする指示を書くための指針だということ。(78ページより)
「アクションを起こしやすくなる」書き方
SMARTなやることリストのつくり方のなかでも、特に注目に値するのが「A」(Attainable)、「実現可能なタスクを書く」という部分。
タスクを書く際には、曖昧で具体性に欠けるものになりがち。
「~をする」「~をやる」ということばで終わっていて、なにを指しているのか明示されていないようなものになってしまうということです。
こうした「言いたいことはわかるけれども、具体性を欠いている」タスクの書き方を避けるために有効なのが、英語でいうところの「動詞」に注目するという方法です。
「do homework」で終わらせずに「solve questions on page 33-35」といったように「問題を解く」「プリントを完了させる」といったように、取りたいアクションに対応した言葉を使うわけです。(81ページより)
日本語の場合はこれに対応する構文はありませんが、ひとつの目安になるのが「~をする」「~をやる」だけで終わらせている文章を意識的に膨らませること。
つまりは「する」「考える」の内容が盛り込まれているようにするわけです。
日常生活において、リストについて考察する機会はそれほど多くないかもしれません。
だからこそ、リストの可能性をさまざまな角度から探り、紹介している本書は役立つのでしょう。
仕事や自分自身をよりよい形に変えるために、参考にしてみてはいかがでしょうか?
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Photo: 印南敦史
Source: 角川書店
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February 19, 2020 at 04:30AM
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