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Monday, June 19, 2023

名画を2度傾け2度上がる 襲撃された美術館抗議は創造的に ... - 朝日新聞デジタル

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 世界各国で相次ぐ環境保護活動家らによる名画襲撃。被害に遭った美術館の一つ、ウィーンのレオポルド美術館が、ユニークな試みでこの動きに対抗してみせた。名画とつくる、創造的な環境問題へのメッセージとは――。

 昨年11月15日、レオポルド美術館に展示されていたグスタフ・クリムトの絵画に黒い液体が浴びせられる事件が起きた。「化石燃料による環境破壊をやめよ」と叫ぶ環境活動家2人による襲撃。この日は石油精製会社の協賛による無料観覧日だった。支援を受ける美術館を批判し、気候危機への注目を促すことが目的だった。

 狙われたのは、クリムトが20世紀初頭に描いた代表作「死と生」。評価額は2億ユーロ(日本円で約300億円)以上と言われる。ガラスで保護された作品は無事だったが、国宝級の名画が標的にされた衝撃は大きく、世界で報道された。

 4カ月後の3月15日、同館を訪れると、「死と生」の近くに、クリムトが描いた「アッター湖畔」が左に2度傾けて掛けられていた。同時代の画家エゴン・シーレの「日没」も斜めだ。それぞれの傾きはわずかだが、通常、美術館の絵画は完璧に水平に飾られる。それだけに、何とも言えない違和感が漂っていた。

作品ごとの傾き、角度の意味は

 「この展示は今回の襲撃に対する私たちの回答です」とハンス・ペーター・ウィップリンガー館長は話す。公開中の作品のうち、風景画を中心に15点を傾けた。

 傾きには意味がある。その角度は、描かれた場所の環境問題に連動しているのだ。アッター湖はウィーンから西に約250キロに位置し、19世紀末の芸術家が好んで夏を過ごした場所。温暖化で地球の平均気温が2度上昇すると、ここの生態系が崩壊するという。2度の角度で傾けられた作品は、クリムトが愛した風景が失われる気候変動の予測値を暗示している。

 シーレがイタリアのアドリア海沿岸を描いた「日没」の傾きは4度。地球の平均気温が4度上がれば、海面が上昇して人びとは移住を強いられ、この風景や生物圏も失われるという予測に基づく。平均気温が5度上がると、ギュスターヴ・クールベが描いたフランス・ノルマンディー地方の海岸の崖は、海面上昇と豪雨で崩れるとされる。この予測を反映して「COASTAL LANDSCAPE」は5度傾けられた。

 チロル地方の少年が泉の水を飲む姿を描く、アルビン・エッガー・リンツの「BOY AT THE SPRING」は7度傾く。オーストリアの夏の気温が今より7度上昇すれば、チロルの水源は枯渇してしまうという。

 展示室では、作品の前で首をかしげる人もいれば、驚いて館に異常を通報する人もいた。

 ウィップリンガー館長は展示の意図を「気候変動対策は喫緊の課題。ただし、抗議は破壊的ではなく、創造的な方法で行うべきだ」と説明。美術館が環境問題に無関心でも無策でもないことを示そうと、館内外で議論を重ね、案を練ったという。使用したデータは、オーストリア気候変動センター(CCCA)に提供を受けた。同館のサイトでも傾けられた作品とともに、その影響の詳しい解説もある。

■わずかな変化が招く結果の恐…

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