これからの日本人のための人生戦略を、ジム・ロジャーズ氏が指南する(写真:SeongJoon Cho/Bloomberg)
日本は、先進国で唯一、近年「賃金」が上がっていない国である。
日本人の給料はなぜ、いつまでも上がらないのか――格差を放置する政府
過去数十年にわたって賃金が上がらなかったことは、日本における貧富の差の拡大に影響を与えている。現在、世界的に物価の上昇が続いているが、海外では物価とともに賃金も上がる場合が多い。しかし、日本では物価が上がっても、賃金は上がっていない。
値上げせざるをえない企業は、それを外国のせいにするだろう。食料やエネルギーは海外の価格に非常に影響されやすい。たとえばシカゴで銅の価格が上がれば、東京を含めた世界各地でも上昇する。
しかし、賃金は違う。日本はアメリカやシンガポールに比べ、移民の受け入れに対して消極的な国だ。海外の優れた人材を迎え入れるために高額な給与を支払う、という慣習もあまりないため、企業は賃金を上げなくても問題視されない。
また、日本には外資系企業で働く人や海外企業に転職する人もそれほど多くはない。国内だけで転職を完結することが一般的だ。このように人材の流動性が低く、企業側もそれを理解している。日本はこうした状況を変えていく必要がある。
賃金の上昇を促すためには、移民を増やし、貿易が活発に行われるようつとめ、日本を今よりも外へ向けて開放する必要がある。ビザ、外国人雇用、貿易制限に関するすべての法律を撤廃することだ。
このような手を打ったとしてもすぐに国民の賃金が上がるわけではないが、優秀な人材を外国から呼び込むことができれば、高齢化がもたらす打撃を緩和させることもできるし、外からもたらされるすばらしいアイデアによって「変化」が進み、イノベーションが起こりやすい土壌がつくられていくだろう。
日本企業が儲かり経済が豊かになれば、国民の生活も豊かになる。また、外国から低賃金労働者の受け入れをすれば生活コストも抑えられるだろう。たとえ給料が劇的に上がらなかったとしても、生活コストが下がれば人々は豊かに生活できる。このように、日本は「国の開放」によりあらゆるメリットを享受できるのである。
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