2021/9/12 中京11R セントウルステークス(G2) 1着 8番 レシステンシア
JRA-VAN
昨年はグランアレグリアが圧巻の末脚を披露したスプリンターズS。昨年は2着に屈したダノンスマッシュが父に続く戴冠となるか、それとも今年もルメール騎手鞍上の4歳牝馬レシステンシアがふたつ目のG1タイトルを手に入れるのか。ほかにも楽しみな馬が揃う秋のG1シリーズ開幕戦をデータから分析する。集計期間は過去10年だが、新潟で行なわれた14年を除外するため9年分となる。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 人気別成績
表1は人気別成績。集計から除外した新潟開催の14年に13番人気のスノードラゴンが制した例はあるものの、中山開催の近9回では1番人気が5勝、2、3番人気が各2勝と、1着馬は上位人気から出ている。ただし、3着には7番人気以下が計8頭も入っているように、人気馬だけの決着となることはあまりない。上位人気馬と穴馬を上手に組み合わせることがポイントとなりそうだ。
■表2 枠番別成績
表2は枠番別成績。好成績なのは4、5枠で、各3勝を挙げ、勝率、連対率でほかの枠を引き離した数値を残している。また、複勝率ベースでは1〜5枠と6〜8枠の間に溝が横たわっており、数値の落ちる外枠はやや不利とみていいだろう。また、1〜3枠はいずれも複勝回収率110%以上を記録しており、内枠の穴馬が2、3着に飛び込むケースにも注意したい。
■表3 牡牝・年齢別成績
表3は牡牝・年齢別成績。先に牡牝別(セン馬は牡馬に含める)から見ていくと、勝率は互角だが、連対率、複勝率では牝馬優勢の傾向が見られる。また、複勝回収率100%という数値が表す通り、牝馬が2、3着に入って穴を演出するケースも少なくない。実際、2、3着に入った牝馬9頭中6頭が7番人気以下で、昨年も10番人気のアウィルアウェイが3着に入っている。
年齢別では4歳が頭ひとつ抜けた好走率を記録しており、近2年をとっても19年に1〜3着、昨年も1、3着に入っている。次いで好走が多いのは5歳だが、出走数も多いため好走率では4歳に及ばない。6歳になると好走率がダウンするものの、15年1着のストレイトガール、17年1着のレッドファルクスとG1馬なら侮れない。3歳は勝ち馬を出しておらず、やや不振の印象も。なお、3歳で好走した2頭はいずれも牝馬となっている。
■表4 同年の実績別成績(中央馬のみ)
表4は、スプリンターズSと同一年に収めていた重賞実績別の成績を表したもの。なお、集計対象は中央所属馬のみとする。まず、重賞1着実績の有無では「あり」の馬が圧倒しており、特に1着馬9頭はすべて該当している。スプリンターズSを制すためには同年重賞1着の実績が必須と言っても過言ではなさそうだ。
では、同じ年にどんな重賞を勝っているといいのか。そこで、重賞1着実績をさらに距離別に分けたところ興味深いことがわかった。1200m重賞1着実績を持つ馬の成績も優秀ではあるのだが、同一年に1400mや1600mの重賞を勝っていた馬の好走率が非常に高いのだ。また、当然かもしれないが、同じ年にG1を勝っていた馬も有力な存在となるだろう。
■表5 前走レース別成績
表5は前走レース別成績。なお、出走例、好走例ともに多い前走セントウルSは表6、前走キーンランドCは表7の項で改めてデータを紹介するので、そちらをご参照いただきたい。
この2レースを除いて出走例が最多となっているのは前走北九州記念。この組は、北九州記念で1、2着だった馬が【0.0.0.8】と苦戦しており、むしろ3、4着だった馬が【0.1.1.0】と好走を果たしていることに注目したい。
そのほか、前項で有力と述べた前走G1出走馬は、具体的には安田記念、ヴィクトリアマイル、高松宮記念から直行した馬に好走例がある。そのほか、G3のCBC賞、オープン特別の朱鷺S(19年以降はリステッド競走)から臨んだ馬の好走もあるが、今年は該当する馬がいない。
■表6 前走セントウルS出走馬の各種データ
表6は前走セントウルS出走馬の各種データ。この通り、セントウルSにおいて1〜3番人気、1〜5着、4角1〜8番手だった馬と、4番人気以下、6着以下、9番手以降だった馬の成績はいずれも段違い。もちろん、前者の条件を満たす馬を狙っていきたいところだ。
■表7 前走キーンランドC出走馬の各種データ
表7は前走キーンランドC出走馬の各種データ。表6で見た前走セントウルS出走馬の傾向とよく似ているのだが、キーンランドSでは1〜4番人気、1〜4着、4角1〜8番手の条件を満たしておきたい。
今年のスプリンターズSには22頭が登録。そのうち、今年重賞勝ちの実績を持つ馬は8頭いる。そして、同一年の重賞勝ちが1400mや1600mだとさらに有望であることを表4の項で確認した。登録馬のなかで該当するのは阪急杯1着のレシステンシア、チューリップ賞1着のメイケイエール、シンザン記念1着のピクシーナイトとなる。
この3頭のうち、今回のデータ分析においてもっとも有望とみなせるのはレシステンシア。好走率の高い4歳で、前走セントウルSにおける「1番人気」「1着」「4角2番手」は、この組の好走条件にすべて合致。阪神JF以来のG1勝利に向けて、今回は大きなチャンスとなりそうだ。
ピクシーナイトはやや苦戦傾向の見える3歳ではあるが、この馬も前走セントウルSの「2番人気」「2着」「4角6番手」は好走条件をすべて満たす。一方、メイケイエールは前走キーンランドCで7着に敗退。桜花賞に続いて本来の実力を発揮できなかった印象で、巻き返しはあるだろうか。
今年1200m重賞を勝っているのは、前述したレシステンシアを除いて5頭。そのなかで注目となるのは、昨年の2着馬にして、今年の高松宮記念勝ち馬であるダノンスマッシュだろう。好走率が少し下がる6歳ではあるが、この年齢で勝った2頭がいずれもG1馬であることは表3の項で述べた通り。前走の香港戦は6着と案外な結果に終わったものの、前走G1という臨戦自体は結果を出している。
そのほか、今年の1200m重賞を勝った馬にはシヴァージ(シルクロードS)、ビアンフェ(函館スプリントS)、ファストフォース(CBC賞)、ヨカヨカ(北九州記念)と4頭いるが、このうちヨカヨカは故障のため引退することが先日報じられた。熊本産馬として注目を集めていただけに残念至極である。
また、ファストフォースはCBC賞の次走・北九州記念で2着に好走したのだが、これはあまり歓迎すべき着順でないことを表5の項で述べた。北九州記念組は3、4着のほうがスプリンターズSで結果を出しており、今年は3着のモズスーパーフレアが出走予定。この馬は6歳だが、G1馬として好走資格はあるだろう。
文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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