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Thursday, October 28, 2021

【鑑賞眼】パルコ・プロデュース2021「ジュリアス・シーザー」 浮かび上がる物語の普遍性 - 産経ニュース

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ブルータス(吉田羊、中央)はシーザーの亡霊(シルビア・グラブ)に相対する(加藤幸広撮影)
ブルータス(吉田羊、中央)はシーザーの亡霊(シルビア・グラブ)に相対する(加藤幸広撮影)

ストイックで洗練されたシェークスピア。

「お前もか、ブルータス」で、あまりにも有名なシーザーの暗殺劇。王冠への野心を見せるシーザー(シルビア・グラブ)を、ブルータス(吉田羊)は親友のキャシアス(松本紀保)にそそのかされ、ローマのためと信じて謀殺する。しかし、市民を扇動したアントニー(松井玲奈)らに追い詰められ…。

森新太郎演出。曇った鏡を張り合わせた抽象的な舞台装置に、パワーゲームの参加者たちが映し出され、その内面をのぞかせる。さまざまな赤色の衣装は美しく、出演者は全員女性だが、殊更性別を強調することはない。余計な装飾がそぎ落されたことで、本質的な要素が浮かび上がってくる。

劇中に散見される〝男らしさ〟を誇るようなセリフは、もっと普遍的な、人間性を論じる内容として捉えられている。

王冠までの道のりを消化試合のように感じていそうなグラブのシーザー、清廉潔白ゆえに墓穴を掘る吉田のブルータス、浅はかな計算高さが見え隠れする松井のアントニー。森とシェークスピアが描いた共和制末期の古代ローマにおいて、権力と大衆人気は結びついており、三者三様の彼らの上を、大衆は操作され、ボールのように転がっていく。

設定上は歴史上の大人物ばかり。戯曲が書き上げられたのも遠い昔だが、見たままの舞台上にいるのは、どこの時代のどこの国とも分からず、性別もあってないような人々。だからこそ、社会で、会社で、学校で、身近な場所で、もしかしたら、こういう構造の物語があったかもしれないと、現代の観客もわが身を顧みてしまう。

31日まで、PARCO劇場(東京都渋谷区)。問い合わせはパルコステージ、03・3477・5858。その後、全国各地で公演する。(三宅令)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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