この建物のちょうどはす向かいに昨年25階建ての高級コンドミニアムと事務所の複合ビルが完成しました。先週、その建物のコンシェルジュから連絡があり、「お宅に月ぎめ駐車場スペース、まだありますか」と。早速伺って話を聞いたところ、居住者用の駐車場が全く足りていないというのです。「市役所の開発許可条件でそんなことはないと思いますが」と返すと「事務所の人たちが数多く駐車場を買い取ってしまって住民用の分が不足している」とのこと。
ちなみに駐車場1台いくらで売っているのですか、と聞けば6万㌦(550万円)と聞き、私はひっくり返る思いでした。私がかつて提示していた販売価格は1万3千㌦でそれでも当時の「販売原価」は7千㌦だったのです。
考えてみてください。皆さんの住宅にある駐車場、あるいは街中の月ぎめ駐車場の1台がそんな価格あり得ますか?もちろん、地下駐車場でセキュリティも整っているとはいえ、不動産価格もここまで来たか、とそれを業としている私でさえあんぐりしているのです。
それでも不動産を買う理由は何でしょうか?CBC(カナダ放送協会)の記事に利上げを見込んだ駆け込み需要が発生しているとあります。今後、アメリカ、カナダとも年後半に向けて階段を上るように利上げが進みます。住宅ローン金利は目先1.5%程度も高くなるかもしれないので駆け込むこともわからないではありません。
日本と違うのはそれだけではありません。カナダの場合、毎年、人口の1%強を移民として受け入れており、その6-7割ぐらいが経済移民です。とすればその数は30万人程度となり、家族構成が平均3人とすれば10万戸の住宅が毎年新移民者用として新規に必要になります。
高層コンドミニアムで換算して年500棟分です。その移民は多くがトロント、バンクーバーに入ります。(フランス語圏のモントリオールはどうしても少なくなります。)それゆえ、2021年のカナダの住宅価格は2割上昇していますが、平均値で見ると読み誤るわけでトロントとバンクーバーが強く引き上げている状態なのです。
日経に「米利上げ前夜 リスクはどこに 住宅融資、ノンバンク依存 シェア7割 資金繰り懸念、監視も弱く」とあります。この記事、2006年にアメリカの不動産バブルがピークとなり08年に破裂したあの時の話ではありません。今の話です。ただ、記事のトーンは「バブルじゃない」との一辺倒。
この話、確かに重要なポイントです。バブルとは妥当なバリュエーションに対して売買価格がかけ離れていることを言います。今起きていることはコストが伴う価格上昇なのです。よって新築物件については開発業者がぼろ儲けしているいるわけではありません。ただ、新築につられて中古価格もつれ高するので本当に儲けているのは持ち家を売却した人達です。
問題はその住宅を買う余力が一般人にあるのかという問題で、事実、個人収入に対する債務レシオが173%とかなり高いわけです。この比率はOECDでは高い方ですが、無茶苦茶というわけではなく、韓国は200%、スイス、オランダは220-230%、北欧諸国は250%越えです。それでも人々は不動産価格上昇を期待するというより価格上昇に恐れをなして早く購入しなくては一生、買えないという状況になっているのです。ちなみに日本は110%台で中位レベルです。
「北米の不動産はなぜ上がる」の究極の答えは世界の多くの人たちがそこに移住したがっているというのが答えです。人が増えれば住宅需要は高まり、供給を超えるペースで需要があれば価格はいくらでも上がる、自明です。逆に日本の不動産価格がなぜ上がらないかはこの逆の説明でほぼ決着がつきます。細かい動きはどうでもよく、住宅とは国家の魅力に比例するといってよいと思います。先ほどの個人債務レシオですが、下位、つまり人気のない国にはメキシコ、ロシア、コロンビア、旧東欧諸国などが並んでいます。
日本が魅力的な国で門戸を開放すれば日本の不動産は大化けします。バブル再来どころではありません。わかっているのだけどなかなかできない、これが現実ともいえそうです。
では今日はこのぐらいで。
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