<宅配サービスやIT系エンジニアなどギグワーカーを「事実上の被雇用者」とするEUの新法が発表された。自由な働き方を望む人たちにとって恩恵となるのか>
※本誌3月29日号「賃金停滞ニッポン」特集では、世界から大きく取り残され、何十年も給料が上がらない日本の「根本的原因と対処法」に迫る。一方、賃金をめぐっては他国でも「攻防戦」が続いており、日本にも何らかのヒントとなるかもしれない。
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主としてネットを介して単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の大半は、発注元と実質上の雇用関係がある従業員であり、しかるべき保護が必要だ――そんな内容の法案を、昨年末に欧州委員会(EUの行政機関)が発表した。
対象となる人は、EU圏内で最大410万人に達するという。
この法案(欧州議会の審議・承認を経て、各国で法制化される必要がある)によれば、以下の5つの基準のうち2つ以上を満たす場合、発注元の企業はギグワーカーの「雇用主」と見なされる。
「報酬を設定している」「服装や行動などのルールを設定している」「労働状況を電子的な手段で監視している」「労働時間や業務内容の選択の自由を制限している」「第三者のための就労を禁止している」の5つだ。
そして発注元が「雇用主」と認定された場合、ギグワーカーは当該企業の「従業員」ということになり、法的な最低賃金の支給や年金、有給休暇、失業保険、病休などの権利を享受できるとされる。
「こういう仕事はかけがえのないものだ」と、欧州委員(雇用・社会権担当)のニコラ・シュミットは言う。「こうした働き方を禁じたり、その成長を止めるつもりはない。ただ、新しい働き方が劣悪で危険なものにならないことを望んでいる」
ギグワーカーの権利と発注元企業の責任は、現行の法制では明らかにされていない。
だが新型コロナウイルスのパンデミックもあって、料理の宅配サービスを中心にギグワーカーへの需要は激増。おかげで何百万もの人が職にありつけたのは事実だ。
しかし現場の人たちからは、必要経費や待機時間を考慮すると、稼ぎは最低賃金にも満たないという不満の声が上がる。
急成長に追い付かない現実
代表的な発注元企業である米ウーバーの広報担当者は、現在も労働条件の改善に尽力しているとしつつ、EUの法案が「大勢の人の仕事をリスクにさらし、このパンデミック下で多くの小規模事業主に打撃をもたらし、ヨーロッパ中の消費者が頼りにしている重要なサービスの存続を危うくする」ことに懸念を表明。
いかなる規制も「ドライバーや配達員が最も望んでいるはずの(働き方の)柔軟性を今後も維持しながら、発注元のプラットフォーム企業が働く人の権利保護や待遇改善に取り組めるようにすべきだ」と述べた。
からの記事と詳細 ( フリーランス保護法で収入は上がるのか──EU報告 - Newsweekjapan )
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