株式投資デビューを果たしたばかりの初心者のなかにも「この局面では、これが上がる気がする」といった、自分の嗅覚や肌感覚を武器に勝負を挑む人たちがいますが、ハラハラしてとても見ていられません。大やけどをしない株の買い方・楽しみ方を、経済評論家の塚崎公義氏が初心者に向けて解説します。
恐ろしい…「上がりそうな気がするから、買う」初心者
株価の短期的な変動は「美人投票」なので、理屈どおりには動きません。これは経済学者ケインズの言葉なのですが、「人々が上がると思うと買い注文が増えて実際に上がるので、株式投資で儲けようと思ったら、真実を追求するよりもほかの投資家たちの考えていることを探るべきだ」といった意味だと考えて下さい。
理屈はその通りなのですが、実際にはほかの人々が何を考えているのか、ほかの人々の考えが明日はどう変化するのか…といったことを知るのは非常に困難なわけですね。
それなのに、投資初心者のなかには「株価が上がりそうな気がするから買う」という人が多いのです。よほど天才的な嗅覚を持っている人でない限り、彼らの予想が当たる確率は5割だと思って間違いないのに(笑)。
「プロの半数が売り、半数が買っている」=現在の株価
A社の株価が千円であるとして、なぜ千円なのでしょうか。それは、プロの半分が値上がりを予想して買い注文を出し、プロの半分が値下がりを予想して売り注文を出している結果、千円で買い注文と売り注文の数が一致しているからなのです。
プロの見解が真っ二つに割れているときに、投資初心者が「上がりそうな気がした」からといって、それに何か意味があるとは、筆者には到底思われないのですが(笑)。
もっとも、プロがあまり参入しない小型株については、この限りではないかもしれません。そのあたりについては、拙稿『【株式投資初心者】プロに勝つのはムリだが…「小型株」ならチャンスありといえるワケ』をあわせてご参照いただければ幸いです。
「上がると買い、暴落すると狼狽売りする」初心者たち
実際には多くの初心者が、株価が値上がりして割高になると「いますぐ買わなければ!」と焦って高値掴みをし、株価が暴落して割安になると「この世の終わりが来る!」とばかりに狼狽売りをするといわれています。
結局、多くの初心者が「高値で買い、安値で売る」ことで損をしており、その分をプロが儲けている、ということなのかもしれませんね。
人間は誰しも「自信過剰」にできている
筆者が常々気を付けていることのひとつに「人間は自信過剰にできている」というものがあります。一見不合理に見えることですが、人々が自信過剰でなければ、多くの人が自己嫌悪に陥ってしまうから、神様が人間を自信過剰に作ったのかもしれませんね。
サラリーマンをやっていると、人事評価に不満を持っている人の多さに気づきます。「自分は優秀なのに人事部がそれを認めてくれない」というわけです。もちろん、人事部も間違えることはあるでしょうから、そうした不満を持つ人があることは理解できます。
実際に人事部も、優秀な人を低く評価する場合や、優秀でない人を高く評価する場合もあるでしょう。問題は「自分は仕事ができないのに、人事部の評価が高い。不思議だ」という人に出会ったことがない、ということです(笑)。
自信過剰な人が、人事部の評価に不満をいいながら自棄酒を飲む…という程度であればいいのですが、「自分は運転がうまい」とか「自分は投資がうまい」などと考えて、大けがをしないように気を付けたいものです。
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