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岩手県遠野市の市民センター体育館で発生した小学6年生男児の死亡事故。ボールがぶつかって割れるガラスの危険性などを踏まえて換気窓を改修したものの、その上に乗った子どもが転落死するという悲劇を招いてしまった。10年以上前に発生した事故だが、開口部の配置や設置についていろいろな教訓を残している。
日経アーキテクチュアに掲載した記事などを「一級建築士矩子の設計思考」(鬼ノ仁/日本文芸社)のキャラクターを用いたイラストとともに振り返る本連載。前回と今回の連載記事では、開口部の水平配置が原因となる転落事故を防ぐうえで役立つ知見を伝える。
前回は、原因の検証などを進めてきた事故調査委員会が、当初の設計に問題はなかったと判断したところまでを伝えた。今回は、その後の改修設計での問題点などをさらに探る。日経アーキテクチュア2010年8月9日号に著者が執筆した記事の続きから紹介していこう。
建物の安全性などの研究を手掛けてきた大阪工業大学の吉村英祐教授は、事故調査委員会の報告書を踏まえて、管理に問題があったと考える。
加えて設計面では「着工当時、現在ほど日常災害に対する意識が高くなかった」と吉村教授は言う。ただ、「今の設計となれば話は別。設計者が設計段階で十分に危険性を予見すべきものだ」(吉村教授)と、くぎを刺す。
このコメントを踏まえると、05年の市民センター体育館の改修時点における施設の安全性に対する検討の甘さが浮かび上がってくる。例えば、開いた窓に近づいたり、窓に力を加えたりすることで生じる転落リスクへの備えだ。
窓は子どもが容易に上がることのできるベンチ状の部分から84cmの高さに存在した。窓に乗るつもりがなくても、このベンチに上がった子どもがバランスを崩して窓に寄り掛かるようなことは十分にあり得た。
しかも、改修したアルミ板には注意書きを施しており、市側には転落の危険性に対する認識があった。窓の設置位置などについて安全性を十分に検証していれば、09年12月の事故後の10年2月に実施した転落防止柵の設置といった対策が、改修時点で可能だったかもしれない。
事故調査委員会の委員を務めた岩手県建築士会遠野支部の三松光三副支部長は、「下部を見通せなくなった仕様への変更は配慮が足らなかった」と補足する。窓が地上から高い位置にあるという現実が分からなくなり、子どもなどが窓に乗ることへの恐怖心を抱きにくくなったからだ。
07年7月から指定管理者として施設を管理する遠野施設管理サービスへの聴取からは、上部まで手が届かないので、窓に寄りかかって掃除をしていたという証言も得られた。
からの記事と詳細 ( 見えない窓が事故を誘発、浮かび上がるリスク想定の甘さ - ITpro )
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