早稲田大学政治経済学術院教授 若田部昌澄氏
2024年は、これまで長年にわたって日本を苦しめてきたデフレから完全に脱却し、国民が豊かさを実感できるようになるかどうかの極めて重要な年になるだろう。
現在起きているインフレは、資源高・食料高によるものと、企業の値上げを起点として賃上げを伴うものとが共存している。今年は企業の値上げから賃金が上がる経済へと転換するかどうかが問われている。
良い転換は起きつつある。昨年は、名目と実質の国内総生産は過去最高水準を記録し、名目賃金も約30年ぶりの高い伸びに。企業収益、税収も過去最高であった。しかし、物価を差し引いた実質賃金はまだ十分に上がっていない。
良い転換をいかに実現し、人々が豊かさを実感できるようにするか。今年のキーワードは高圧経済と改革である。賃金が上がるためには企業の値上げと賃上げが定着しなくてはならない。そして、そのためには経済が十二分に温められ、人の価値である賃金が上がっていく必要がある。政府と日本銀行は、引き続き財政金融政策で経済を温めていくことが重要である。
現在、二つの日本が混在している。これまでのデフレに慣れきった安定と停滞の日本と、復活しつつある、インフレを前提とした成長と変化の日本である。
デフレの世界でも所得と仕事が安定している人々にとっては居心地が良いかもしれない。しかし、デフレの世界では、所得が上がらず仕事も得られない人々が増え、結局のところ財政も年金などの社会保障制度も維持できない。デフレの下では企業は値上げができず、賃金も引き上げられない。働く人の賃金が上がらない世界は維持できない。これに対して、インフレの世界では、企業が適切に値上げをすることで働く人の価値は上がっていく。
少子高齢化が進んでいるから、今後日本は成長できない、豊かになれないのではないかという意見がある。アジアには日本よりも低い出生率で成長している国も多い。少子化対策は大事だが、これまでの日本に足りなかったのは貴重な人々を生かし、生産性を上げる努力であった。具体的には、人手不足に対応するための賃上げ、労働環境の改善、デジタル化、AI、ロボット化への投資である。高圧経済はそうした経済の転換を後押しする。経済成長が続くと税収も増えていくので、財政状況も改善の方向に向かうだろう。
さらに高圧経済を梃子として改革を進めるべきだ。ライドシェアのように、日本にはまだまだ改革の余地が多い。これは日本には改革の伸び代が大きいことを意味する。人々が豊かさを実感するために、制度・規制改革にまい進すべきだろう。
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