公正取引委員会は3月18日、飲食店の口コミを集めたグルメ情報サイトの取引実態調査の結果を発表し、加盟店に対して一方的な契約変更や高額プランへの誘導、低額プランへの契約変更制限を行うサイト運営事業者事業者が存在すると明らかにした。
公正取引委員会は、グルメ情報サイトを巡る取引の中で、独占禁止法上問題のある行為がないか調べるため、2019年4月から20年3月にかけて、サイト運営事業者や飲食店、消費者、情報サイトの営業代理店などを対象にアンケート調査とヒアリング調査を行った。
調査によると、情報サイト加盟店のうち約11%は、一方的な契約変更を受けていたことが分かった。そのうち約69%はそれにより不利益を被ったとしている。
表示順位は契約料によって変動 契約変更は高額化のみ
グルメ情報サイトには飲食店の検索機能があり、高額プランを契約している店舗をより上位に表示する機能があるサイトも多い。加盟店の約80%は契約料によって表示順位が変わると説明を受けたとしている。
「順位が下がったことで月商200万円減少した」という店舗があるなど、表示順位は売上に大きく影響するため、加盟店の約92%が表示順位を上げたいと答えた。
加盟店からは「集客数を増やすには表示順位を上げなければならないと言われると、高額プランを契約せざるを得ない」という声も上がった。
契約期間中に広告効果の高い新プランができると、それまでの契約プランの広告効果が相対的に下がってしまうため、より高額なプランに変更せざるを得ないという意見や、広告効果が下がるならと低額プランに変更しようとしてもイレギュラー対応によるコストがかかるとして認められない場合もあるという。
公正取引委員会は、情報サイトが一方的な契約内容の変更により加盟店に不利益を与えるのは独占禁止法の優越的地位の濫用に当たる恐れがあるとして、契約変更の際には変更の理由を示し、改訂までに十分な期間を設けて加盟店から意見を聞き取るのが望ましいとしている。
店の点数、サイト側は「変動しない」、加盟店は「変動した」
表示順位とは異なり、サイト運営事業者は、口コミの評価(点数)は契約金額によって変動しないとしている。一方で、加盟店からは「口コミも味も変わっていないのに、有料会員になると点数が上がった」「有料会員をやめると点数が大きく下がり、再度会員になると戻った」という声もあり、意見が食い違う。
公正取引委員会は、合理的な理由なく意図的に表示順位や点数の算出ルールを定め、特定の飲食店の表示順位や点数を下げて著しく不利な状態にすることは「差別的取り扱い」に当たるとしている。
同委員会は順位や点数の算出に重要な要素について、飲食店や消費者にできる限り開示するのが望ましいとしているが、サイト運営事業者は「点数の不正操作を防ぐため、算出方法を全て公開するのは難しい」としている。
営業代理店は「ノルマを達成できないと手数料を下げる」
サイト運営事業者から委託を受けて加盟店に営業をかける営業代理店からは、「目標達成できない場合は、支払う手数料を下げるといわれる」「サイト運営事業者には従わざるを得ない」などの意見も出た。
公正取引員会は、サイト運営事業者が営業代理店より優位な立場にある場合、営業代理店に対し、十分な協議なしに達成が難しいノルマを一方的に設定し、達成できなかった場合に手数料を減らすといった行為は、優越的地位の濫用に当たる恐れがあるとの考え方を示した。
同委員会は調査を通して「優越的地位にあるといえるグルメ情報サイトが存在する可能性は高い」と結論づけた。今後は、独占禁止法上問題のある具体的な案件を見つけた場合は、これまで通り厳正に対処するとしている。
グルメ情報サイトについては、飲食店と消費者をつなぐプラットフォームとして今後も役割が拡大すると考えられる。一般的な検索サイトがグルメ情報を口コミとともに掲載するケースも増えており、競争が激化する可能性もあるとして、公正取引委員会は、競争環境の変化に引き続き注意する構え。
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