ジョージ・オーウェル『1984』に代表されるような、ディストピア小説が今は成立しにくい。かつてSF小説や映画が描いたような世界が、現在進行形で目の前にあるからだ。しかし、だからこそ読んで欲しいのが、アメリカで昨年ベストセラーとなったディストピア小説『フライデー・ブラック』(駒草出版)。黒人青年が描いた、どうにも残酷な黒人差別がねじ曲がった近未来世界。同時にもちろん、アメリカ社会の今を反映している。ここから何を読みとり、考えていくべきか? コロナ禍における人種差別も沸き起こり始めた今、同書を翻訳したアメリカ・ワシントンD.C.在住の押野素子さんと共に考えていきたい。
店舗に殺到する貪欲な人間どもの狂乱
『フライデー・ブラック』はアメリカ・ニューヨーク州オールバニー出身の、ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤーのデビュー作。発表からたちまち話題を呼び、「ニューヨークタイムズ」などが絶賛、ベストセラーになった。ナナはガーナ移民の両親のもとに生まれ育ち、名門シラキュース大の大学院創作科で修士号を取得した28歳の青年だ。
本のタイトル『フライデー・ブラック』とは11月の第4木曜日、感謝祭の翌日にアメリカで開かれる大規模な安売り「ブラックフライデー」をひっくり返して言ったもの。12本の短編から成り、表題作では安売りに殺到する貪欲な人間どもの狂乱を描く。こんな風だ。
“八十人ほどがゲートを駆け抜けると、激しく争いながら、突進して来た。商品棚を押しのけ、客同士でぶつかり合っている。火事や銃声から逃げる人を見たことがあるだろうか? あの光景に近いものがある。ただし、そこから恐怖を減らして、欲望を増量した感じだ。俺のキャビンからは、子どもの姿が見えた。六歳ぐらいの女の子だったが、興奮した買い物客の波に飲み込まれて、消えていった。女の子はうつ伏せで、大の字になって倒れている。ピンクのコートには、汚い靴の跡がついていた。”(「フライデー・ブラック」より)
これを写し書いてツイッターを開いたら、まさにアメリカのスーパーマーケットが、買い占めで棚がすっからかんになった写真を何枚も見た。ディストピア、なう……。
「買い占めは今、どの地域でもあります。(3月13日)金曜日の午後3時からトランプが会見を行うというので、その前にドラッグストアに行って買い物をし、会見後に同じドラッグストアに行ってみたら、山積みされていたトイレットペーパーやペーパータオルが見事に空になってました。あの会見から大きく変わったと感じます。アメリカの人たちは狩猟民族的感覚でパニックになると怖いと感じてしまうことがありますが、銃や弾薬の売上が伸びているというニュースも読みました。実際に日ごろは温厚なブラック・ネイバーフッドに『暴動が起こるかもしれないから、自衛のために銃を持っておいたら?』と言われてびっくり。私にはない思考回路なので。3・11の後には涙を流してくれたような郵便配達員の黒人男性は私によく『6人に運ばれるよりも、12人に裁かれる方がいいんだぞ(棺を運ぶのは6人、陪審員は12人、から来ている例え)』と言うんですが、今回もまた言われました。今、人を踏みつけても生き残れという空気が覆ってきているのを感じます」
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