目の前で積み上げられるパフェの層。揚げたてにパラリと塩をふったポテトチップス。おやつだけれど、おやつと呼ぶにはぜいたくすぎる時間を過ごすことができるカフェ「お菓子 つくる」が、今回のさんぽの行き先です。オープンキッチンで次々とデザートが作られる様子は、まるで割烹(かっぽう)レストランのよう。できあがっていく過程も丸ごと味わう、新しいカフェのスタイルに胸が躍ります。
■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。
シェフの前菜をいただきながら、パフェの層を眺める幸せ
早春のデザートの主役はなんといっても、イチゴ。真っ赤に熟れた大粒のイチゴが一つ、二つと盛り付けられるたびに、できあがりを待つ人たちの顔がほころびます。L字形のカウンターの向こうで、鮮やかにデザートを仕上げていくのはシェフの伊藤龍二さん。フレンチやイタリアンのレストランで約20年活躍した後、独立。料理人時代も、コースの最後に提供するデザートにひときわ情熱を注いできました。
「できあがるのを待つ時間も、味覚を刺激できたら」と話す「つくる」流のスタイルは、メインの前後に1皿ずつ、前菜とお口直しの一品を提供すること。さらにドリンクは2杯選ぶことができ、常に何かを味わう楽しみをかたわらに、時間を過ごすことができます。
前菜となる一皿には旬の野菜を使い、甘さとみずみずしさを兼ね備えた、スイーツと料理の中間のような口あたりに。さっぱりと潤う余韻を味わいながら、4種から選べるメインのスイーツを待ちます。中でも、季節のフルーツを採り入れたパフェは「つくる」のスペシャリテ。
ホワイトチョコレートのソース、台湾茶・阿里山金萱茶(アリサンキンセンチャ)のゼリー、塩こうじでマリネしたイチゴ、求肥(ぎゅうひ)で包んだオリーブオイルのアイスクリーム……。次々と重ねられるパフェの層を眺めて「そろそろできあがりかな?」と思うも、まだまだ。
バスクチーズケーキのクリームやスポンジ、ギモーヴ(マシュマロ)など、パティシエの技巧が凝らされた一品一品がさらに積み重なり、グラスの中に夢のようなイチゴの島が現れます。
味覚も締まる、締めのポテチ 最後の一口までおいしい記憶を
さまざまな風味と食感が調和し溶け合うパフェは、ボリュームに反してするするとおなかに収まる軽やかさです。それでも、たっぷりの甘いものをいただいた後は少し締まりのある味が欲しくなるもの。そこで、最後に供されるのが揚げたてのポテトチップスです。
「甘いものをたくさん食べたあと、ふと子どものおやつのポテチをつまんだら、すごく後味が締まったんです。そこからヒントを得て、最後まで“おいしい”口で終えてもらえたらと思って」(伊藤さん)
メインのデザートを食べ終わるころに揚げはじめ、揚げたてにフリーズドライの梅と北海道・羅臼産の塩をふりかけて出されます。香ばしいポテトの風味と心地よい塩気が、甘さにゆるんだ感覚をキリッと引き締める。この一連の流れが、クセになること請け合い。
「食べたもの一つひとつが記憶に残るような、そういう味を作ることができたらと思います。全部手作りですがそれ以上に、お客さんの時間をつくるということも(店名には)あるのかなと」(伊藤さん)
待つ時間も、できあがる工程も、食べ終えるまでの変化も、ストーリーのように楽しむ。するとおやつは間食ではなく、豊かな食体験の一つになります。心満たす甘い時間を、時々自分自身に作ってあげてはいかがでしょう。
■お菓子 つくる https://www.instagram.com/okashi_tsukuru_kyoto/
フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)
BOOK
大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&Travelの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。
からの記事と詳細 ( 目の前でパフェが積み上がる デザートのライブ感を味わう「お菓子 つくる」 - 朝日新聞デジタル )
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