(写真=PIXTA)
健康保険は私たちが医療サービスを受ける上で重要な役割を果たしている。だがその仕組みや運営の実体は、あまりよく知られていない。給付の財源となる保険料は毎月の給与から天引きされる形で徴収されているため、「保険料を払っている」感覚があまりないからだ。だが2023年度、企業の健康保険組合の平均保険料率は9.27%となる見通しで、過去最高の水準となる。賃上げが進まない中、保険料率だけが上昇すれば、我々の手取りは減っていく。それだけに、自分の保険料がいくらで何に使われているのか、きちんと把握するのは重要だ。社会保険労務士の山本礼子氏監修のもと、健保組合について知っておきたいことをまとめた。
■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)「健保組合の8割」赤字の理由、高齢者医療費に少子化対策
(2)知らぬ間に上がる保険料 健康保険の仕組みを正しく学べ(今回)
(3)2束3文でも売れない、バブルの残り香漂う健保保養所の今
(4)宮永俊一健保連会長、「不信」より「納得」生む制度設計を
(5)攻める健保(上)デンソー、トヨタを巻き込み特定健診の受診率アップ
(6)攻める健保(下)喫煙率22%から8%の田辺三菱、健保と労組のタッグが奏功
(7)医療費膨張招いた経営者「健康への無関心」があだに
(8)診療報酬はなぜ上がり続ける? 国・医師会に声上げよ
Q:企業別に健保組合をつくるメリットは?
国民皆保険制度がある日本は、全国民が急な病気やけがなどに備える医療保険制度に加入する仕組みになっている。どの医療保険に加入するかは、勤務先や雇用形態、年齢によって変わる。会社員の場合、多くは企業別、あるいは業種別の健康保険組合(健保組合)に加入する。中小企業の場合は、全国健康保険協会(協会けんぽ)に入るケースが多い。ほかにも、自営業者や75歳になるまでの高齢者が中心となる国民健康保険(国保)、公務員およびその家族が加入する共済組合などがある。
企業別や業種別の健保組合が存在するのは、組織を自ら運営することによるメリットが大きいからだ。加入者の健康状態や収入、組合の財政状況などに応じて保険料率を低く抑えられるほか、法定の保険給付に組合が独自に給付金を上乗せする「付加給付」もできる。保養所やスポーツ施設を保有したり、健康診断や人間ドックの費用を補助したりする所もある。ただし、支出の一定割合を国費で賄う協会けんぽや国保と異なり、主な収入源はあくまで事業主(会社)と被保険者(従業員)が納める保険料収入だ。
●主な公的医療保険の種類
注:共済組合は健康保険に当たる「短期給付」と年金に当たる「長期給付」、福祉事業を運営 出所:厚生労働省「令和4年版厚生労働白書」、健康保険組合連合会「令和5年度 健康保険組合予算編成状況」
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