現代のPCにとって、ゲームは最も性能を要求される用途のひとつだ。ゲーミングPCではCPUとGPUの性能が特に重要であることが知られているが、メインメモリに関しては、各タイトルの最低容量や推奨容量程度の情報しか存在せず、その性能がゲームの動作にどう影響するのかという情報は少ない。
そこで、今回は7本のゲームを使って、ゲームプレイ中にPCのメモリがどれくらい使用されているのかと、メモリの性能がゲームのパフォーマンスに与える影響を調査してみた。ゲーミングPCの購入や自作を考えているユーザーにぜひチェックしてもらいたい。
3パターンのメモリ性能の違いをベンチマークテストで確認、DDR4-3200(低レイテンシ)が最速
実際のゲームでのテスト結果を紹介する前に、今回のテストで用いる3通りのメモリ動作設定により、メモリ自体の性能がどの程度変わってくるのか、また典型的な3Dベンチマークではメモリ性能の差がどのように反映されるのかを確認してみよう。
SiSoftware Sandra 20/20で帯域幅とレイテンシを測定
まずは実行したのは総合ベンチマークソフト「SiSoftware Sandra 20/20」。このソフトではメモリの帯域幅とレイテンシを測定した。
測定の結果、DDR4-2133(CL15)の帯域幅が26.9GB/sで、レイテンシが59.7ナノ秒であったのに対し、DDR4-3200(CL22)はそれぞれ38.2GB/sと46.4ナノ秒を記録。帯域幅は1.42倍に増加し、レイテンシは8割弱に短縮されている。
最速を記録しているのは動作設定どおりDDR4-3200(CL19)で、DDR4-3200(CL22)より帯域幅とレイテンシの両方が僅かに向上している。なお、メモリクロックが同一なのに帯域幅が向上しているのは、レイテンシの短縮によりデータ転送に利用できる時間が増加した結果と考えられる。
ファイナルファンタジーXIVベンチマークでメモリの使用容量と速度をチェック
続いて、3Dベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 漆⿊のヴィランズ ベンチマーク」の結果を紹介しよう。ここでは、描画品質を「最高品質」に固定し、フルHD(1,920×1,080ドット)と4K(3,840×2,160ドット)、2つの画面解像度でテストを実行した。
ベンチマーク結果の前に、ベンチマーク実行中のメモリ使用量をチェックしてみたものが以下のスクリーンショットだ。ベンチマーク中に使用されているメモリ容量は、フルHDで4GB弱、4Kでは約4.4GBだった。なお、このメモリ使用量は総使用量であり、Windowsが起動時点で使用している容量も含まれる。
ベンチマークスコアをまとめたものが以下のグラフだ。フルHD解像度はメモリ性能の差がスコアに反映されており、DDR4-2133(CL15)のスコアを基準とした場合、DDR4-3200(CL22)は約13%、DDR4-3200(CL19)は約16%、それぞれ高いスコアを記録している。
一方、4K解像度ではDDR4-3200(CL22)とDDR4-3200(CL19)はほぼ同スコアとなっており、DDR4-2133比でのスコア向上も約3%にとどまっている。
もともと、「ファイナルファンタジーXIV: 漆⿊のヴィランズ ベンチマーク」はメモリ性能がスコアに反映されやすいベンチマークテストなのだが、フルHDの方が4Kよりもメモリ性能がスコアに反映されたのは、より高いフレームレートであるためだろう。
フレームレートの増加はCPU処理を増加させ、それに伴ってメモリアクセスも増えるため、メモリ性能差がパフォーマンスにより大きく影響するという訳だ。
ゲームプレイ時のメモリ使用量は6~10GB前後、高速なメモリほどフレームレートは伸びやすい傾向7タイトルでメモリの使用量と速度の影響をチェック
それでは、7本のゲームタイトルを使って、ゲームプレイ中に使用されているPC全体のメモリ使用量と、メモリ性能によるパフォーマンスの変化を確認していこう。
今回テストに用いたのは7本のゲームは、「フォートナイト」、「モンスターハンターワールド:アイスボーン」、「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」、「レッド・デッド・リデンプション2」、「Call of Duty: Modern Warfare」、「バトルフィールド V」。
基本的に、各ゲームでは描画設定を「最高」かそれに準ずるものに設定した上で、フルHD解像度と4K解像度でメモリ使用量とパフォーマンスの測定を行った。
モンスターハンターワールド:アイスボーン
モンスターハンターワールド:アイスボーンでは、グラフィックス設定「最高」をベースに、テクスチャを高解像度化する「High Resolution Texture Pack」を適用。グラフィックスAPI「DirectX 12」でテストを実行した。
モンスターハンターワールド:アイスボーンでのメモリ使用量は、フルHD時に約7.4GB、4Kで約7.5GBだった。
なお、Windows 10標準のセキュリティソフト「Windows Defender」使用下でモンスターハンターワールド:アイスボーンを実行した場合、Windows Defenderのバックグラウンドプロセス「Antimalware Service Executable」のメモリ使用量が徐々に増加し続け20GB以上に達する現象が発生したが、これはモンスターハンターワールド:アイスボーンの実行ファイルをWindows Defenderの除外に追加することで解消した。
フレームレートの測定結果では、フルHD時にDDR4-2133(CL15)動作が明らかに低い数値を記録している。このDDR4-2133(CL15)を基準とすると、DDR4-3200(CL22)は約21%、DDR4-3200(CL19)は約22%、それぞれ高いフレームレートを記録している。
4K時のフレームレートは若干の差がついているものの、メモリ性能が反映されたものではなく、誤差の範囲内と言ったところだ。
メモリが足りなくなるとフレームレートが低下、スタッタリングの発生も
ゲームによってはメモリ使用量が10GBを超えるものもあったが、メモリ容量が不足するとどうなるのかをDDR4-3200対応4GBメモリ2枚組「Crucial CT2K4G4DFS632A」を使って確認してみた。
テストに使ったのは、メモリ使用量が8GBを超えていたFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONとレッド・デッド・リデンプション2。
これらのテストで測定されたフレームレートを比較してみると、メモリ容量が8GBとなる「CT2K4G4DFS632A」使用時は明らかにフレームレートが低下しており、メモリ不足がパフォーマンス低下に直結していることが確認できる。
また、実際にプレイしてみると、スタッタリングと呼ばれる画面がカクつく現象の発生頻度も増加しており、単なるフレームレートの低下以上にゲーム体験が損なわれていた。
ちなみに、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONの推奨メモリ容量は16GB、レッド・デッド・リデンプション2の推奨メモリ容量は12GB。ゲームを快適に遊ぶのであれば、メーカー推奨容量は下回らないようにすべきだろう。
ゲーミング用途ならDDR4-3200の8GB×2枚組がお薦め配信もするなら16GB×2枚組を
以上のように、今回はメモリ使用量とメモリ性能の違いによるゲームのパフォーマンス変化をチェックしてきた。
メモリ使用量に関しては、ゲームのみを実行している状況でもメモリ使用量が8GBを超えることが少なくなかった。高画質設定であることも影響しているが、メモリが不足した結果のパフォーマンス低下を考えれば、現代のゲーミングPCには16GBのメモリ容量は確保すべきだ。さらに倍の32GBを搭載すれば、ゲームと並行して動画配信などをするユーザーでも安心だろう。
メモリ性能とゲームのパフォーマンスに関しては、一部のゲームではフレームレートの大幅な向上が確認できる一方で、効果の薄いゲームではメモリ性能の差はゲーム体験を向上させることは無かった。安定して動作する限りにおいて、メモリが高性能で損をすることは無いが、どこまで高性能なメモリを使うべきなのかは、容量やコストとの兼ね合いと言ったところだ。
現在のメモリ価格を考慮すると、DDR4-3200の16GBキットや32GBキットは、ゲーミング用途においてコストパフォーマンスに優れた選択肢だ。このあたりのメモリを基準に検討してみると良いだろう。
[制作協力:Crucial]
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March 01, 2020 at 10:01PM
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